吉村洋文大阪府知事。弁護士から政界入りしわずか8年で府知事に駆け上がり、コロナ禍での「イソジン発言」で全国的知名度を獲得した改革派リーダーです。
大阪都構想の推進、大阪・関西万博の準備、IR(統合型リゾート)計画など、大阪の未来を左右する重要政策を次々と推し進める一方、独断専行との批判も。2023年の府知事選では史上最多得票で再選され、2024年には日本維新の会代表にも就任。
「イケメン知事」の異名を持つ吉村氏の素顔と政治家としての実績、そして今後の展望までを徹底解説します。
基本プロフィール
吉村洋文(よしむら ひろふみ)は1975年6月17日、大阪府河内長野市に生まれました。現在49歳(2025年4月現在)の日本の政治家で、大阪府知事(公選第20・21代)、大阪維新の会代表(第3代)、日本維新の会代表(第4代)を務めています。
基本情報
- 生年月日: 1975年6月17日
- 出身地: 大阪府河内長野市
- 学歴: 河内長野市立千代田小学校→河内長野市立千代田中学校→大阪府立生野高等学校→九州大学法学部卒業
- 前職: 弁護士・税理士
- 資格: 弁護士(2000年登録)、税理士
- 家族構成: 妻、長女・次女(双子)、長男の5人家族
政治家としての経歴
弁護士時代
吉村洋文は1998年に九州大学法学部を卒業後、同年10月に司法試験に合格し、2000年に弁護士登録をしました。当初は熊谷信太郎弁護士の法律事務所に勤務し、その後2005年に共同経営でスター綜合法律事務所を開設しました。弁護士時代には消費者金融・武富士の訴訟代理人(顧問弁護士)を務めたほか、タレントのやしきたかじんの顧問弁護士も務めていました。タレントのやしきたかじんとの縁が後に政界入りするきっかけとなりました。
政治家としての軌跡
時期 | 役職 | 主な実績・出来事 |
---|---|---|
2011年4月〜2014年 | 大阪市会議員 | ・大阪維新の会公認で北区から出馬し当選 ・2013年5月から市議団政調会長を務める |
2014年12月〜2015年10月 | 衆議院議員 | ・維新の党公認で比例近畿ブロックで当選 ・維新の党政調副会長を務める ・大阪都構想の制度設計で中心的役割 |
2015年12月〜2019年3月 | 大阪市長 | ・大阪市長選で59万6045票(得票率56.4%)で当選 ・5歳児保育料無償化 ・大阪万博誘致活動 ・受動喫煙防止条例の検討 |
2019年4月〜現在 | 大阪府知事 | ・2019年府知事選で226万6103票(得票率64.4%)で当選 ・2023年府知事選で243万9444票(得票率73.7%)で再選 ・新型コロナウイルス対策「大阪モデル」策定 ・大阪都構想住民投票実施(2020年11月、否決) |
2020年11月〜現在 | 大阪維新の会代表 | ・松井一郎氏の後任として就任 ・2024年11月に代表再選 |
2022年8月〜2024年11月 | 日本維新の会共同代表 | ・馬場伸幸氏との共同代表体制 |
2024年12月〜現在 | 日本維新の会代表 | ・馬場伸幸氏の後任として就任 |
大阪市会議員時代
2011年、橋下徹が率いる大阪維新の会の公認で大阪市会議員選挙に大阪市北区選挙区から出馬し、当選しました。当時、維新の会は候補者が不足しており、やしきたかじんの紹介で吉村を橋下徹代表が口説く形で政界入りしたと言われています。2013年5月からは市議団政調会長を務めました。
衆議院議員時代
2014年、大阪市会議員を辞職し、同年の第47回衆議院議員総選挙に維新の党公認で大阪4区から出馬しました。自由民主党前職の中山泰秀に敗れたものの、重複立候補していた比例近畿ブロックで復活当選を果たしました。衆議院議員在職中は維新の党政調副会長を務め、大阪維新の会の「都構想推進本部」(本部長:橋下徹)の局長も務めるなど、大阪都構想の制度設計で中心的な役割を担いました。
大阪市長時代
2015年11月22日、大阪市長選挙に大阪維新の会公認で出馬し、自民党の推薦および民主党大阪府連・日本共産党大阪府委員会の支援を受けた前大阪市議の柳本顕らを破り、当選しました。同年12月19日に正式に大阪市長に就任し、史上初の大阪市会議員経験のある市長となりました。
市長時代の主な取り組みは以下の通りです:
- 子どもの貧困対策や待機児童対策など、子どもへの投資強化
- 5歳児の幼稚園・保育所の保育料無償化
- 教員の新たな人事給与制度導入
- 健康寿命を延ばす協定を大阪市立大学と締結
- 特別養護老人ホームの建設費の助成
- 受動喫煙防止条例の検討
- 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の誘致活動
大阪府知事時代
2019年3月、大阪都構想住民投票の実施をめぐる公明党との協議決裂を受け、3月20日付での大阪市長の辞職願を提出し、統一地方選挙に行われる大阪府知事選挙に出馬することを表明しました。市議会は自民、公明、共産などの反対多数で不同意としましたが、2019年4月7日に執行された大阪府知事選挙では対立候補の小西禎一に勝利し、第20代公選大阪府知事に当選しました。公選の大阪市長を経験した者が公選の大阪府知事に就任したのは初めてのことでした。
2023年4月9日の大阪府知事選挙では、次点の候補に200万票以上の差をつけ、2期目の再選を果たしました。吉村がこの知事選で獲得した243万9444票は、1999年の知事選で横山ノックが獲得した235万票を超え、過去最多の得票数となりました。
知事時代の主な取り組みは以下の通りです:
- 新型コロナウイルス対策(大阪モデルの策定、医療非常事態宣言の発令など)
- 大阪都構想の推進(2020年11月の住民投票では否決)
- 2025年大阪・関西万博の準備推進
- IR(統合型リゾート)計画の推進
維新の会での立場と役割
2019年6月16日、大阪維新の会の代表代行に就任し、8月31日には日本維新の会の副代表に就任しました。2020年11月21日には、大阪維新の会の全体会議にて、片山一歩大阪市議を破り、住民投票否決の引責で辞任した松井一郎の後任の党代表に選出されました。
2022年8月27日には日本維新の会の共同代表に就任し、2024年12月1日には馬場伸幸代表の後任を選ぶ日本維新の会代表選挙が実施され、金村龍那衆議院議員、空本誠喜衆議院議員、松沢成文参議院議員の3人を破り新代表に選出されました。これにより、大阪維新の会代表(第3代)と日本維新の会代表(第4代)の両方を務める立場となりました。
主な政策と功績
大阪都構想への取り組み
吉村洋文は衆議院議員時代から大阪都構想の制度設計に携わり、その推進に力を入れてきました。大阪都構想は大阪市を廃止して特別区を設置する構想で、維新の会の看板政策となっています。2度目となる2020年11月1日の住民投票では反対が賛成を上回り否決されましたが、その後も都構想に代わる新たな制度案を検討する姿勢を示しています。
2020年11月1日の住民投票否決を受け、「市民の判断を率直に受け止める。都構想再挑戦を僕がやることはない」と述べましたが、2024年11月19日に任期満了に伴う大阪維新の会代表選挙で再選した際には「大阪都構想」必要として、半年から1年で新制度案を検討するとの方針を示しました。
大阪・関西万博とIR計画
大阪万博招致と準備
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の大阪への誘致に尽力し、大阪市長時代から2025日本万国博覧会誘致委員会副会長として活動しました。各国の代表らが参加する万博誘致フォーラムに出席し、パリ駐在の各国BIE政府代表らと個別会談も行い、支持を訴えて回りました。
大阪・関西万博の開催が決定した後も、会場予定地の大阪市此花区と同北区の2拠点を連携させ、来場者が回遊できるような仕組みを構想するなど、万博成功に向けた取り組みを進めています。
IR(統合型リゾート)計画
大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に、カジノを含む統合型リゾート(IR)を2030年秋の開業を目指して整備する計画を推進してきました。しかし、2025年の大阪・関西万博開催中のIR工事をめぐって、博覧会国際事務局(BIE)や経済界の幹部らが万博期間中の工事を中断するよう求めるなど、課題も抱えています。
主要プロジェクトの状況
プロジェクト | 状況 | 進捗・課題 |
---|---|---|
大阪都構想 | 2度の住民投票で否決 | ・2015年5月17日:反対694,844票、賛成694,996票(差152票)で否決 ・2020年11月1日:反対692,996票、賛成675,788票で否決 ・新たな制度案を検討中 |
大阪・関西万博 | 開催決定・準備中 | ・2018年11月23日:開催地に決定 ・2025年4月13日〜10月13日開催予定 ・課題:費用増大、会場整備スケジュール |
IR計画 | 推進中 | ・2030年秋の開業目標 ・MGMリゾーツ・オリックスグループが事業者 ・課題:万博期間中の工事、住民の反対意見 |
教育改革 | 部分的に実施 | ・教員の人事給与制度改革 ・全国学力テストでの評価反映は見送り |
教育改革
大阪市長時代には教育改革にも力を入れ、教員の新たな人事給与制度の導入を決定し、「頑張っている先生がきちんと評価され、昇給する制度が必要だ」との考えを示しました。また、2018年8月には大阪市の全国学力テストの正答率が政令市で2年連続最下位だったことを受け、全国学力テストの結果を教員の手当や人事評価に反映させる考えを示しましたが、様々な批判を受けて最終的には全国学力テストの活用は見送られました。
新型コロナウイルス対応
吉村府知事の政治家としての評価を左右する大きな要素となったのが、新型コロナウイルス対応です。テレビでの情報発信力の高さから「イケメン知事」として全国的な知名度を獲得する一方、科学的根拠に基づいた政策決定の重要性も問われることになりました。
大阪モデルの策定
2020年5月5日、政府が休業要請の解除基準を示さないことを理由に、大阪府独自に「大阪モデル」という数値的な指標を提示しました。主な自粛緩和の基準として「新規感染者のうち感染経路不明者が10人未満」「PCR検査においてコロナ陽性率が7%未満」「重症患者用の病床使用率が60%未満」という3つの条件を7日連続で達成した場合、大阪府内の自粛要請を慎重に経過観察しつつ段階的に解除するというものでした。
しかし、5月23日にはモデルの基準を一部変更し、この変更に当たっては記者会見も専門家を交えた協議も開かれませんでした。これに対し京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏は「結果を見てから基準を決める。科学でこれをすると信頼性が揺らぎます」と懸念を表明しました。
大阪のコロナ対応タイムライン
時期 | 主な出来事・対応 | 状況・影響 |
---|---|---|
2020年1月末 | 関西空港での中国からの乗客へのマスク配布 | 初期対応として注目される |
2020年3月19日 | 大阪-兵庫間の往来自粛要請 | 兵庫県との事前協議なく発表し批判も |
2020年5月5日 | 「大阪モデル」発表 | 数値的指標による自粛緩和の判断基準を提示 |
2020年8月4日 | ポビドンヨード(イソジン)発言 | 全国的に話題になるも科学的根拠が不十分と批判 |
2020年11月〜12月 | 第3波対応の遅れ | 都構想住民投票後の対応遅延を指摘される |
2020年12月3日 | 「医療非常事態宣言」発令 | 不要不急の外出自粛を要請 |
2021年2月 | 緊急事態宣言解除の独自基準策定 | 国より緩い基準で早期解除を求める |
2021年4月〜5月 | 第4波での医療崩壊危機 | 重症病床逼迫、死者数が東京都を上回る |
2021年4月7日 | 「医療非常事態宣言」再発令 | 医療体制の逼迫を受けて発令 |
ポビドンヨード(イソジン)発言
2020年8月4日、吉村は松井一郎大阪市長、大阪はびきの医療センターと共同で記者会見を開き、「うそみたいな本当の話をさせていただきたい。ポビドンヨードを使ったうがい薬を使って、うがいをすることでコロナの陽性者が減っていく」と述べ、イソジンなどのポビドンヨードを含むうがい薬の使用を推奨しました。
この発言は全国的に大きな話題となり、うがい薬の品切れが相次ぎましたが、翌日には厚生労働省が国として推奨する段階ではないとの見解を示し、日本医師会の中川俊男会長も「科学的根拠が十分ではない」と指摘するなど、様々な批判を受けました。吉村は「予防効果があるとは、ひと言も言っていない」などと釈明しましたが、「イソジン知事」と揶揄されるきっかけとなりました。
医療非常事態宣言と医療体制の逼迫
2020年第3波の感染拡大時には対応が遅れたとの批判を受け、12月3日に「医療非常事態宣言」を発令し、府民に対し不要不急の外出を控えるよう呼びかけました。また、2021年4月には第4波の感染拡大により重症病床が逼迫し、医療崩壊の危機に直面しました。
第4波では大阪府での死者が多く出て、5月22日時点での累計死者数は2114人で、人口の多い東京都の2015人より多くなりました。3月1日以降、5月21日までの死者は973人で全国の22.7%を占め、2番目に多い東京の634人を大きく引き離しました。こうした状況に医療現場からは、2回目の緊急事態宣言を前倒しで終了し重症病床を削減させた大阪府の責任を訴える声もありました。
政治的・社会的争点に関する立場
吉村洋文は様々な政治的・社会的争点について明確な立場を表明しています。以下は主な争点に関する彼の立場です。
政治・憲法に関する立場
争点 | 立場 | 発言・主張 |
---|---|---|
憲法改正 | 賛成 | 日本国憲法第9条の改正、集団的自衛権の行使に賛成 |
消費税 | 複合的 | 2017年4月までの消費税率10%への引き上げを評価 軽減税率の導入には反対 |
アベノミクス | 批判的 | 実効性を評価せず |
特定秘密保護法 | 反対 | 法案に反対の立場 |
選択的夫婦別姓 | やや賛成 | 「どちらかといえば賛成」と表明 |
外交・安全保障に関する立場
吉村洋文は安全保障や外交問題についても発言しています。北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際には抗議を行い、首相の靖国神社参拝には賛成の立場です。一方で、歴史認識に関しては村山談話、河野談話の見直しには反対しています。
また、特定の民族や人種に対するヘイトスピーチの法規制には賛成の立場で、アメリカのサンフランシスコ市で新たな慰安婦像が設置された際には「不確かで一方的な主張をそのまま歴史的事実として記すことは、歴史の直視ではなく日本批判にあたる」と抗議しました。これを理由にサンフランシスコ市との姉妹都市関係を2018年10月に解消しています。
経済・開発に関する立場
争点 | 立場 | 発言・主張 |
---|---|---|
カジノ解禁 | 賛成 | IR(統合型リゾート)計画を推進 |
原子力発電 | 批判的 | 「福島の事故は続いており、あんな危険なものはない」と発言 |
大阪・関西万博 | 推進 | 誘致活動を積極的に展開、万博後の発展も視野 |
武漢との湾港提携 | 推進 | 「一帯一路」との関連で議論あるも協力関係維持の姿勢 |
地方自治・行政改革
大阪都構想に代表される行政改革は吉村氏の政治的立場の最も象徴的なものです。維新の会の伝統的な主張である「二重行政の解消」「地方分権の推進」を継承し、東京一極集中を是正するために「副首都・大阪」の実現を目指しています。
2024年11月に日本維新の会代表選に立候補した際は、「永田町の飲み食い政治はもうやめる」と述べ、党内の「密室政治」に否定的な見解を示しました。一方で2025年度政府予算案の交渉では国会対策の重要性も認識せざるを得ない場面もあり、「国対政治」との折り合いをどうつけるかという課題にも直面しています。
人物像と私生活
吉村洋文はサラリーマン家庭に生まれ、父親は大阪、母親は広島の出身です。広島は親戚も多く、司法修習生時代を過ごした土地でもあり、2019年夏の自身のボーナス40万円を西日本豪雨で被災した広島市に全額寄付したこともあります。
身長178センチ、体重72.3キロ(2021年10月時点)。家族は妻と長女・次女(双子)、長男の5人家族です。剣道初段の経験があり、高校ではラグビー部に所属していました。吉村は自身の高校時代を「毎日毎日、遅くまで花園を目指して楕円球(だえんきゅう)を追いかけていました。勉強は不十分でしたが、良い青春時代でした」と語っています。
同級生によると、「口数も少なく、みんなを引っ張っていくリーダータイプでは決してなかった」とのこと。また、”女性から支持率の高いイケメン政治家”とされていますが、「高校時代モテたという話は聞いたことがない」と言われています。
吉村洋文の素顔
項目 | 詳細 |
---|---|
身長・体重 | 178cm・72.3kg(2021年10月時点) |
趣味・特技 | 剣道(初段)、子どもとのサッカー |
健康維持法 | 寝る前のお菓子 |
好きな音楽 | エレファントカシマシ「今宵の月のように」 |
ファッション観 | 「スーツが嫌い」「服は5〜10年着る」 |
家族構成 | 妻、長女・次女(双子)、長男の5人家族 |
受賞歴 | 第10回ベスト・プラウド・ファーザー賞in関西 政治部門(2016年) |
私生活では「スーツが嫌い」と公言し、「一回服を買ったら5年から10年は着る」とも語っています。健康維持の方法は、寝る前にお菓子を食べることとのこと。休日は「時間があれば、子供と一緒に公園で遊んだり、サッカーをしたりしている」と言います。2016年には第10回ベスト・プラウド・ファーザー賞in関西 政治部門を受賞しています。
また、音楽の趣味についても、2020年4月12日のFM大阪の番組出演時に、司法試験勉強中に励まされたエレファントカシマシの「今宵の月のように」をリクエストするなど、垣間見えることがあります。
物議を醸した発言と批判
吉村洋文は、その言動が物議を醸すことも少なくありません。主な事例は以下の通りです:
- ポビドンヨード(イソジン)発言: 前述の通り、科学的根拠が不十分な段階での推奨が批判を浴びました。
- あいちトリエンナーレ発言: 2019年8月7日、「表現の不自由展・その後」展示中止問題に関して大村秀章愛知県知事について「辞職相当だと思う」と述べました。
- 関西電力株主総会での態度: 2016年6月の関西電力の株主総会では、森詳介会長に「質問時間が4分を過ぎています」と注意されると、「大株主である大阪市の意見を聴いてほしい。なぜ意見を聴く機会を持とうとしないのか」といらだった口調で詰め寄る場面がありました。
- 全国学力テスト結果の教員評価への反映: 2018年8月、全国学力テストの結果を教員の手当や人事評価に反映させる考えを示し、批判を浴びました。
支持率と評価
吉村洋文は、特に大阪府内では高い支持率を誇っています。2023年4月の大阪府知事選挙では243万9444票を獲得し、過去最多の得票数を記録しました。これは1999年の知事選で横山ノックが獲得した235万票を超える記録です。
選挙結果から見る吉村洋文への支持
選挙 | 年月日 | 得票数 | 得票率 | 順位/候補者数 |
---|---|---|---|---|
大阪市議会議員選挙(北区) | 2011年4月10日 | 7,386票 | 19.7% | 2位/7名 |
衆議院議員総選挙(大阪4区) | 2014年12月14日 | 74,101票 | 34.9% | 2位/4名(比例復活) |
大阪市長選挙 | 2015年11月22日 | 596,045票 | 56.4% | 1位/4名 |
大阪府知事選挙 | 2019年4月7日 | 2,266,103票 | 64.4% | 1位/2名 |
大阪府知事選挙 | 2023年4月9日 | 2,439,444票 | 73.7% | 1位/6名 |
知事就任以来の支持率の推移は、コロナ対応などの影響で上下しているものの、総じて高い水準を維持しています。特に2023年の選挙では得票率73.7%という圧倒的な支持を獲得し、その強固な支持基盤を見せつけました。
評価と批評
同じ維新の会のメンバーである元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹、前大阪府知事・前大阪市長の松井一郎は、それぞれ吉村について「素晴らしい政治家。優秀」「能力の高い覚悟を持った政治家」と高く評価しています。
一方で、首長としては独断専行の傾向もあり、府庁職員からは橋下や松井の方が助言を聞いてくれたとの意見もあります。特に新型コロナ対応や大阪都構想に関しては賛否が分かれており、対応の遅れや説明不足を指摘する声もあります。
強みと課題
強み:
- 若さと行動力
- 明快な発信力とメディア対応能力
- 改革志向の強いリーダーシップ
- 法律家としての専門性(弁護士・税理士資格)
課題:
- 科学的根拠に基づいた政策立案の重要性
- 関係機関との調整や合意形成プロセス
- 批判や専門家の意見への受容性
- 長期的ビジョンの策定と実行
公約に対する姿勢と実行力は多くの支持者から評価されていますが、コロナ対応での「イソジン発言」や突発的な政策変更などは批判の対象にもなっています。また、2024年には日本維新の会代表に就任し、地方政治家から全国区の政治家へと役割が拡大する中で、国政での手腕も今後注目されるでしょう。
ファクトチェック
「吉村洋文は大阪市会議員、衆議院議員、大阪市長、大阪府知事と急速に出世した」
評価: 事実
吉村洋文氏は2011年に大阪市会議員に当選後、2014年に衆議院議員、2015年に大阪市長、2019年に大阪府知事と、わずか8年で地方議員から都道府県知事へと上り詰めました。この政界での異例の速さでの出世は、維新の会という新興政党の中で重要な役割を担い、橋下徹氏や松井一郎氏の強い信頼を得た結果と言えるでしょう。
「吉村洋文はイソジンでのうがいが新型コロナウイルスに効果があると述べた」
評価: 部分的に事実
2020年8月4日の記者会見で吉村氏は「うがい薬でうがいをすることでコロナの陽性者が減っていく」と発言し、ポビドンヨード(イソジン)でのうがいを推奨しました。しかし批判を受けた後、「予防効果があるとは、ひと言も言っていない」と釈明しています。この発言をきっかけに全国でうがい薬の品切れが相次ぎ、厚生労働省や日本医師会からも慎重な見解が示されました。
「吉村洋文は2023年の大阪府知事選挙で過去最多得票を記録した」
評価: 事実
2023年4月の大阪府知事選挙で吉村氏は243万9444票を獲得しました。これは1999年の横山ノック氏の235万票を上回り、大阪府知事選挙史上最多の得票数です。さらに次点候補との差も200万票以上という圧倒的な勝利でした。この結果は、コロナ対応などで批判を受けながらも、府民からの強い支持を維持していることを示しています。
「吉村洋文は大阪都構想の否決後、この構想の再挑戦をしないと明言した」
評価: 部分的に事実だが、立場が変化
2020年11月1日の住民投票否決直後、吉村氏は「都構想再挑戦を僕がやることはない」と明言しました。しかし、時間の経過とともに立場に変化が見られ、2024年11月の大阪維新の会代表再選時には「大阪都構想」の必要性を訴え、半年から1年で新たな制度案を検討する方針を示しています。このような政治姿勢の変化は支持者と批判者の両方から注目されています。
今後の展望
吉村洋文は2025年に迫った大阪・関西万博の成功に向けて注力する一方、維新の会の代表として党勢拡大や国政での存在感強化にも取り組んでいます。特に2024年12月に日本維新の会の代表に就任したことで、地方政治だけでなく国政にも大きな影響力を持つ政治家としての役割が期待されています。
任期と今後の政治日程
時期 | 予定・課題 |
---|---|
2025年4月〜10月 | 大阪・関西万博開催(成功が最大の政治課題) |
2027年4月 | 大阪府知事としての任期満了 |
2027年〜 | 次の政治キャリア(3期目出馬か国政移行かが焦点) |
2030年前後 | 大阪IR(統合型リゾート)開業予定 |
2023年4月に2期目の大阪府知事に就任し、任期は2027年4月までとなります。今後は大阪都構想に代わる新たな大阪の行政機構改革案の策定や、万博後の大阪の発展戦略、IR計画の行方などが注目されています。また、政界での「ポスト吉村」を担う人材の育成も課題となっています。
今後の政治キャリアの可能性
国政進出の可能性も取りざたされていますが、現時点では大阪府知事としての任期にコミットする姿勢を示しています。ただし、全国的な知名度の高さや若さを考えれば、将来的な首相候補としての可能性も指摘されています。
49歳(2025年4月現在)という若さで、大阪府知事2期目と日本維新の会代表という要職を兼任している点からも、今後の政界での長期的な活躍が予想されます。維新の会は「大阪発の政治改革」を掲げて躍進してきましたが、全国政党としてさらなる成長を目指す中で、吉村の手腕が試されることになるでしょう。
今後の主な政策課題
今後も改革派政治家として、そのスピード感のある政策立案と実行力が注目される一方、科学的根拠に基づいた意思決定や、より丁寧な合意形成プロセスを求める声にどう応えていくかが課題となるでしょう。
- 大阪・関西万博の成功: 2025年の万博は吉村知事の最大の政治課題。開催経費増大への対応や会場整備の遅れなどの課題も
- 行政改革の新展開: 大阪都構想否決後の新たな制度案の策定と実現
- IR(統合型リゾート)計画の推進: 万博期間中の工事中断問題や住民の反対意見への対応
- 万博後の大阪発展戦略: 万博のレガシーをどう活かすかも重要な課題
- 全国での維新勢力拡大: 国政での影響力強化と地方での候補者擁立
- 広域行政での存在感: 関西広域連合での役割や他府県との協力関係構築